ほんとのことなのに文字にしたら紋切り型のニュアンスがやたら鼻につく“京都で待ち合せ”だけれど、あえてこの際開き直るわ、だってあたいはほんの一週間前にこの手のセンテンスにおける土地の固有名詞としては最大の照れくささが付きまとう“パリで待ち合わせ”を経験済みなんだから。それに比べたらまだ、可愛いもの。
（彼女がローズいろのジャケット―あれもこれも濃いピンクにさせているだなんてどうかしてる！―を着て手を振っている。）ロッカーにリュックを預けて目の前のバスに乗る。一年振りに会うから恥ずかしいって言われたらあたいはなんて返せばいいのか分からない。
