阿修羅のごとく

いつも最終日な行動録を反省、億劫がらずに思い出した時に、と思いさっそくとはいっても公開直後というわけではありませんが『阿修羅のごとく』を日比谷シャンテにて。
すごいすごい、どこもかしこも向田節がみっちり充満。小説の手触りが3Dで新素材で迫り来る。次の場面にかぶさるようなSE使いは見る側の意識を小気味よく引っぱり、それは読書の時の、向田テキストを目で追いページを繰るあのスピード感に類似してた。そして沸き上がるように響くフォンティーヌのラジオのように。
実家の壁に掛けられた猫の絵をヴィジュアル方面の裏スタート地点(表はやっぱり山藤章二の題字)に、昭和50年代の家や町のセット、そして四姉妹の衣装はもちろん見どころたっぷり。これ、着物映画としてもすごく楽しいです。あの時代の普段着〜ちょっとよそ行きまで、紬多目で、長女の大竹しのぶ・綱子は衣装のほとんどが着物だし、次女の黒木瞳・巻子もおめかしで良く着ている。ここには世代的な着用度のグラデーションをきっちり見ることが出来て、四女の深田恭子・咲子となると全く着ない。長女45と四女25、20年の差ということだけれど、これって当時の大人女子をうっすら覚えている私の記憶と照らし合わせてもけっこう忠実な衣装設定におもえました。桃井かおり大竹しのぶがアップで顔を突き合わせるシーンなんて、それだけでもお腹いっぱいなのに二人ともこなれた着姿だからもうたまらない(私はここ、爆笑でした)。母親役・八千草薫紙風船柄の紬が効果的に使われているのも印象に残ります。洋装では深津っちゃんの襟まわりがどれも可愛らしかった。
エンドロールで衣装協力をチェックしているときにうっかり“サルサタイム”のクレジットに気をとられて(大きめサイズの女性靴専門店・深田恭子ご用達)、着物関係は“灯屋2”しか分らなかったのが残念。
深田恭子の演技がひとりどうにも2003年風情なのが気になりましたが、ちょっとどろついたストーリーの中では意外にもそれが清涼剤として働いているようで結果的には良かったように思います。なんか書きたいことがいっぱいなんだけれど今日はここまで。