薬指の標本*1

日仏学院で行われた一般試写会に行ってきました。以下、とても主観的な感想です。
原作の小説*1を一度読んでいるのですが、そちらを地の部分としてとらえると、この映画化において付け加えられたエピソードは、どうしてもそこから少し浮き立って見えてしまうのですけれど、それは私が小説から受けたイメージを、特に意識せずとも大事にしすぎてしまっていることの表れだったのかも知れません。あまりこういう見方はしたくないと思っているのですが、今回に限っては思いのほか強く感じてしまい、そんな自分に驚いたりもしました(でもきっと、事前に小説には触れずに観たなら、その境目は見えないものなのだと思います)。
しかし映像は、その原作によって自分の中に像を結んだ濃い靄の集合体を、よりはっきりと多面的に構造化して見せてくれる素晴らしいものでした。舞台のディテールに東洋とヨーロッパとの差はあれど(これはフランス映画なのです)、それはまぎれもなく小川洋子世界の標本室。ラボの硝子扉の中に、一瞬にして引き込まれてしまいました。
それと個人的に特筆すべきはアジア映画もびっくりの、女性の皮膚表面における湿度の高さ。主人公の女性イリスの、メラニンの少ないうぶ毛に蒸気が絡んでしっとりきらきらとする様子は全編に渡って。彼女のまぶたも常にグロッシーで、標本技師の白塗りを喚起させるような顔面とはとても対照的、質感に徹底してこだわったメイキャップは、この映画の陰の立て役者だと思いました。
あとポーティスヘッド大好きっこだからベス・ギボンスの音楽も嬉しかったし、あの寝乱れた薄いカットソーの下のイリスの乳房の様相とかねーとってもいいおっぱいだったな…