低い声は浴室まで

くり返される何かのうなりのようにけれどもはっきり響いてくるので、湯舟で読んでいたループに次ぐテキストが特徴的な小説の“(悪)夢のような”気配がいっそう増幅されて、それは例えば目眩が止らない日に乗った電車の中を何両先までもふらつかずに歩けてしまう(これを体験したときは可笑しくて仕方がなかった。みんながよろめいているのに)揺れとのシンクロのようで、少し何かがずれてしまえばとたんに崩れるはずなのにずっとそれらは組み合わされたままだった。あたいがのぼせそうになる手前まで。
切り裂くようなシーケンサーもスクラッチもなくたって、ベスの声はそれだけで恨み節のようだものあたいを震わせることなんて簡単。けれど同時に存在する、穏やかに眠らせてくれそうな調子は初めて出会う彼女。

Out of Season

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