(読まなくてもいい内容ですが)名画座にて。隣の席の方が女装の男性だった。私がうっかりかばんの中身を通路に落とし、拾ってもらったのをきっかけに、上映が始まるまでの数分のあいだに少しおしゃべりをした。なんだか随分親切だし好意的な人だな、友だちになれたりするだろうか、と思い、拾物をしてもらったお礼にお茶でもご馳走したほうがいいかな、と上映後に誘ったら「あんた、最初に見たときは好みだと思ったけど、話してみたら違ったわ」とあっさり振られた。ショックだった。いくらフェミニンでもやっぱり男なんだから、仲良くなるなんて無理だったんだ。くさくさした気分で、なおかつお腹も空いていたので辛いカレーでも食べてやろう、と劇場近くのMというセルフサービスの店に入る。ウィンドーには新商品で、シーモンキー然とした飼育セットも並んでいた。動物シリーズで、ライオン、きりん、象、トラなど6種類ほど。券売機でチキンカレーと、飼育セットサンプルのボタンを押す。カウンターでカレーと、その隣に設置された実演販売のテーブルからサンプルを受取る。大きめのコップと二種類の粉袋、サンプルは象だ。一番目の袋の中身をそのコップに溶かして培養液を作り、次に「卵」の粉を入れる。カレーを食べながら待つこと数分、果たしてコップの中には無数の、半透明で小さな象が浮き沈みしていた。やがて大小の個体差が見られるようになり、中でも比較的大きめな一匹をスプーンですくってみた。雫がテーブルに広がらないよう、折り畳んだ紙ナプキンの上にのせる。サイズは1センチ角大、といったところ。辺りを伺うようにじっとしていたかと思うと、やがて鼻をぶらぶらさせ頭の上に持ち上げると、小さくパオーンと言った。