レジャー

外は午後四時を過ぎても溶解をさそう温度だから、さらに自分の地平を歪めて面白がるにはもってこいなので、普段は滅多に利用しない駅前の超老舗コーヒーパーラーに入ってみた。表のウィンドーにはこの町で一番古い喫茶店、の札がサンプルと一緒に飾られている。ナポリタンを普通に頼むと大皿で来ちゃうようなお店。ある時代で止まってしまったみたいな、けれど「クラシック」の呟きが付け入る隙もないお店。隣のテーブルに浴衣のおじいさんがやってきて、「ちょっとでいいんやー表のブーブーくらいの持ってきて」「金ならいくらでも出す」とか言ってお子様ランチのスペシャル・オーダーを通してる。私は“小盛り”でカレーを頼む。すぐに、普通の量に盛られたお皿が運ばれてくる。奥のテーブルでは高校生の女の子たちがお喋りしている。ひとり、宇多田ヒカルっぽい声の子がいて顔は見えないけれどとにかくよく聞こえてくる。「あいつうるさい」ってクラスの他のグループに言われてるのは間違いないし、たとえ私が同じグループでもこっそりそう思うだろうってぐらい、現に。引田天功を思わせるウェイトレスさんはお水のお代わりを注ぎに来ない代わりに、統べてのテーブルに水の入った大きいジャグを置く。