お花の煙、五月の悪夢

爆音と共に打ち上げられた火種は、まるで和三盆で形作られた巨大なねじり梅がヒヤシンスのような柱状に連なって花芯からむくむくと広がりつつ中空にそびえたった。新しい煙の、花火。地上から見上げると、一つの花の直径は20メートル以上あって、煙で出来ているはずなのに、いつまでも消えずに浮かんでいる。一つ一つが砂糖菓子の淡い色とりどり。なんて恐ろしい、今はこんな物が真昼用の花火として受け入れられているだなんて。隣にいる友達は平気で眺めているけれど(巨大なこの物体に恐怖を感じるのは、ここでは私だけなのかな?)。
江戸川でも片貝でもない成田の滑走路、私はそれを出発ロビィから見上げていた。花の物体は柱を崩して、さっき飛び立ったハワイ行きのノース・ウェストの機体にまとわりついたかと思うと、そのまま垂直方向に高く高く飛行機を押し上げていった。やがて機体の腹についた花々が上空の雲の色に同化したかとおもうと、それらはすっかり消えてしまった。私の乗り遅れた飛行機。まだ方々に、近い空気を漂っている花がたくさんある。